Full Album
1956年の録音だから、もう半世紀近く前のアルバムである。ケニー・ドリューの昔の代表作で、繊細にして優雅なドリューのピアノが楽しめる。曲はキャラバン、カム・レイン・カム・シャインなど、スタンダードな名曲ばかり。ポール・チェンバースのベースとフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムスも、当然ごきげん。センシティヴなドリューのピアノをゆっくり楽しめる名盤。アルファ・ジャズなどから発売されている現代のドリューもいいが、過去のドリューもまた、いい。
1. Caravan 2. Come Rain Or Come Shine 3. Ruby, My Dear 4. Weird-O 5. Taking A Chance On Love 6. When You Wish Upon A Star 7. Blues For Nica 8. It's Only A Paper Moon
Kenny Drew (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (d)
NYC, September 20 & 26, 1956
ピアノ・トリオの傑作は数多くあるが、このアルバムは50年代に録音されたジャズ・ピアノの白眉といっていい内容である。ケニー・ドリューはチャーリー・パーカーとも共演したことがあるビ・バップ時代から活躍したピアニストだが、若い人にとっては70年代以降ステイープル・チェイス・レーベルの「ダーク・ビューティー」などに代表されるヨーロッパでの活動がおなじみであろう。その流麗でテクニック、リズム、センスとも申し分の無い完成されたピアニストという印象で、デクスター・ゴードンやジャッキー・マクリーンなどとも共演し、独自の感性美あふれるプレイを展開している。しかし、このトリオ・アルバムは後のドリューの功績に決して引けをとらない黒人特有のブルースフィーリングに支えられた粘りとエモーション、さらに力強いタッチなどがすでに聴かれ、50年代最高のピアノ・トリオの演奏を実現させている。「降っても、晴れても」ではビル・エヴァンスとの比較、「ルビー・マイディア」では後のマッコイ・タイナーとの比較などをしても興味深い。ハンク・ジョーンズ、トミー・フラナガン、ソニー・クラーク、ウイントン・ケリー、バリー・ハリスなど優れたピアニストを輩出した50年代だが、ケニー・ドリューの50年代もこれ1枚で当時の最右翼であったことを実証している。