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  Whisper Not

1999年夏、パリにおけるスタンダーズ・トリオの2枚組ライヴ盤。このトリオは、90年代半ばにキース・ジャレットが体調を崩し、一時活動を休止していたが、その後見事に復活した。その健在ぶりをあざやかにアピールしたのが本作である。それ以前のスタンダーズ・トリオと決定的に違っているのは選曲だ。もちろん本作もスタンダード集には違いないが、これまでのようにいわゆる映画やミュージカルが原点ではない。バド・パウエルの<1>に始まって、ベニー・ゴルソンの<2>、ディジー・ガレスピーの<3>、あるいはクリフォード・ブラウンの<7>など、ビバップからハード・バップ時代にジャズメンによって書かれたスタンダードを大々的に取りあげている。結果、演奏はこれまで以上にエキサイティングでジャジーになっており、まさに熱演の連続。4ビート・ジャズの楽しさを満喫できる最高のトリオ演奏だ。スタンダーズ・トリオのアルバムに駄作なしといわれるが、なかでもこれはとびきりの作品である。

Disc:1
1. Bouncin' With Bud
2. Whisper Not
3. Groovin' High
4. Chelsea Bridge
5. Wrap Your Troubles
6. Round Midnight
7. Sandu


Disc:2
1. What Is This Thing Called Love
2. Conception
3. Prelude To A Kiss
4. Hallucinations
5. All My Tomorrows
6. Poincana
7. When I Fall In Love

Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (d)

 

"Palais De Congres",
Paris, France, July 5, 1999

発売直後に手に入れて、その夜中に聞き終えた。99年夏のパリでのトリオ・ライヴ。あまりやられないので懐かしいConceptionや、Poincianaを演奏してくれているのに拍手したい。今までよりもかなり大人になった感じで、演奏に深みを感じる場面が多い。体調不良が続いたなかで、何か感じるものがあったのだろうか。この人から、天才肌の即興演奏ではなく、こういう熟したというか、練れた演奏も聴けるとは期待以上の収穫だ。必ずしも録音の違いだけではないと思うが、何となく音が柔らかくなっている。調べてみると、これまでのがKonghausで、今回がPearsonの録音であるらしく、ライナーでも鯉沼さんが本人の希望でこうなった経緯を書いている。客席でなく、舞台の袖で聴く感じはこうだ、とのこと。もう一つの解説で、筑紫さんがメッセンジャーズのことを書いているが、腑に落ちません。
『メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』で健在をアピールしたキース率いる“スタンダーズ・トリオ”の99年7月パリでのライヴ盤。長期療養生活からの完全復帰を決定付けるような完璧なまでの好演。
1999年7月5日パリ、コングレパレスでのライブ。約2年間の闘病生活の後、復活したキース。前作『The Melody At Night,With You』は自宅での録音だったが、スタンダーズとしてライブに立てるまで回復した最初のアルバムが本作である。病気から復活した本人も嬉しいだろうが、スタンダーズにもう一度逢えたファンはその1000倍嬉しいに違いない。演奏できる歓びがこのアルバムには満ちあふれている。出会ったばかりのスタンダーズにもない、85年から87年までの最初のツアーのスタンダーズにもない『生きて、演奏していくこと』の素晴らしさを噛みしめている気がする。そしてその『生きて、演奏していくこと』のエネルギーを徐々に挑戦していくエネルギーにまで昇華していく。もう一度スタンダーズに逢える歓びをジャズを愛する人全てに感じて欲しい。
一聴、ジャズミュージシャン・オリジナル・スタンダード演奏集。Bouncing With Bud、 Groovin' High、そしてRound Midnight とくれば、それだけでモダン・ジャズファンならうれしくなる選曲です。実際に、今までの作品とは違った切り口で迫る3人のプレイに、「スタンダーズはやっぱり凡百なトリオとは違う」と納得することでしょう。でも、スタンダーズの本当のすごさが現れるのは Disk2 から。まずは What is this thing called love? がすごい。 ジャック・ディジョネットがジャズ界屈指の名ドラマーというのは知っていたけど、これほどのプレイをこんなにあっさりと見せつけられたら、あっけにとられてしまいます。アルバム Still Live の枯葉とは別の意味で(もちろん、これも最高、ディジョネット大熱演)本当に言葉を失います。テンポを下げて Conception、バラードの Prelude To A Kiss、ミディアム・テンポ Hallucinations、そしてスローな All My Tomorrows ときて、登場するのが、可憐なラテンの Poinciana、このアルバムの山場。聴き流してしまうかのようなプレイの中で展開されるキース・ジャレット、ゲーリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットの才能。一年に及ぶ休息は彼ら(とりわけキース)の創造性に翳りを与えるどころか、さらなる表現力を与えてしまったのかと思わせるプレイです。あくまで軽くテーマ、徐々に熱をはらみ、そして一気に花開くアドリブ、そして見事に落とし前をつけ消え入るように収束するエンディング。こんなプレイを当たり前のようにしてしまうなんて、この3人はやっぱり化け物です。最後に、一曲一曲の内容とは離れますが、僕にはこのアルバムがスタンダーズの再出発アルバムとしても映ります。Still Live で確立された、反復メロディーをもとに構築されるスタンダーズの長尺アドリブを封印してしまったからです。誰が聴いてもスタンダーズとわかる(もちろん彼らしかできないという意味を含め)あの展開を自ら封じ込めてしまうというのは、ある意味、トリオの魅力減少という危険をはらむ選択だったと思います。もちろん、マンネリ化を避けるという意味では必要な選択だったのかもしれませんが、そこにあるのは「自分たちの「あの」展開がなくても、スタンダーズは他のプレイヤーができないクリエーティブな演奏ができるんだ」という意思表示に思えたりするわけです。そして、実際、彼らは「いつも」の展開なしで、いつも以上の演奏を聴かせてくれます。非常にお勧めなのは言うまでもありません。

 

 

 

 

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