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  Standards Vol 1

キース・ジャレットは、70年代に即興ソロでワン・アンド・オンリーな世界を築きあげた。そのキースがスタンダード曲ばかりを集め、ピアノトリオで演奏したのが本作だ。メンバーは、ゲイリー・ピーコック(B)とジャック・デジョネット(Ds)。77年、ゲイリー・ピーコックのリーダーアルバム『テイルズ・オブ・アナザー』でそろった、オールスター的ピアノトリオである。それぞれがスタンダードとは距離を置く、オリジナル曲の演奏が多い革新的なジャズメンだ。そんな顔ぶれでのスタンダードの演奏に、当時のファンは驚いた。だがその後15年以上も、このユニットの活動は続いている。本作では、ジャズ界最高ともいえるテクニックとアイデアで、半世紀以上も演奏され続けてきたスタンダードナンバーに、新たな風を吹き込んでいる。彼らのリリースする作品は、ほとんどがライヴ演奏だ。その原点となるスタジオ録音の本作こそ、最高傑作との声が高い。
1. Meaning Of The Blues
2. All The Things You Are
3. It Never Entered My Mind
4. The Masquerade Is Over
5. God Bless The Child

Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (d)

 

Power Station, NYC,
January, 1983

ピアノ・トリオの最高峰{スタンダーズ・トリオ}の来日に合わせたゴールド・コレクション。スタンダードを素材に楽曲にひそむ未知の可能性を見事に表現した傑作、しかも彼らのデビュー作だ。
数あるスタンダーズの作品のなか、その出発点がこれ。もう何回聞いたのであろうか。もうあの感動は起こらないのだろう。と迷いつつ、今日もレコードに針を落とす。一曲目の出だしから、その初々しい響きがたまらない。後期のスタンダーズにはない感覚だ(失礼)。このアルバムは、スタンダーズVOL2に比べ比較的有名な曲が入っている。一曲目のミーニング・オブ・ザ・ブルース。3人がお互いの音を確かめるように、手探りで演奏を進めていく。聞いているうちに、こちらまで手に汗にぎってしまう。そして、2曲目のオール・ザ・シングズ・ユー・アー。手垢のついたこの名曲が新鮮に蘇る。今でこそ、キースの和声法は一般化したが、この当時にはより一層新鮮だったものだ。そして、イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド、ザ・マスカレイド・イズ・オーヴァーと渋めの曲が続き、最後にゴッド・ブレス・ザ・チャイルド。エリックドルフィーで有名なあの曲だ。でも、何かが違う。いや、全てが違う。
ドラムのジャックのリズムに乗せ、ベースのゲーリーとピアノのキースがドラマチックに踊り狂う。大興奮。そして静寂。「ああ聞いてよかった」、といつものセリフ。
自分がこのアルバムを気に入っているのは、10分を超える長い演奏となっている最後の1曲、ゴッド・ブレス・ザ・チャイルドのおかげ。もともとこの曲は、非常に辛気臭いブルース調の曲。歌詞も必ずしも明るいものではなく、聖書の言葉を引っ張ってきて、子供の労働の成果を搾取している親を諌める内容のもの。原曲に関しては、自分の必ずしも幸福ではなかった家庭環境に照らして、しんみりとした方向へと感情移入させてしまうのが常だった。しかし、このアルバムのゴッド・ブレス・ザ・チャイルドは曲調も全然一新して、新鮮……。いや、新鮮なんてありきたりな言葉じゃ済まないな。透明感の高いピアノ、思わずステップを刻みたくなるノリのいいドラム、骨太で安定し、それでいて明るさを引き立たせるベース……。 トリオの特徴が上手く出ていて、心を浮き立たせる曲調。各自のソロパートの音も弾けてる。特にドラムのソロは「おいおい、ロック調つーか、マーチかよ、これ(笑)」 10分超の演奏時間が短く感じる。本来は重苦しいはずのこの曲なのに、開放感に包まれ、心がすっかり鼓舞され「何? このゴッド・ブレス・ザ・チャイルド? 全然、おもしれーじゃん。もっと聞かせろ」 お陰で、このCD、10数年にわたり、家で仕事をするときに欠かせないBGMのひとつになってしまった。
ピアノトリオの甘美さや気高かさだけでなく、そこに潜む狂気や凶暴性までも、これほどまでに濃密かつ克明に表現したトリオは他にないだろう。キースは自己の幻想をどこまでもリアリスティックに追求する妥協なき芸術家だ。彼の構築する音世界は孤高ではあるが、まるで深遠な真理のように、人を惹きつける。虚飾を徹底的に排除したパワフルでシリアスなジャズ。三人のインタープレイが創り出すとってもリアルなこの音空間を共有できることは、ジャズファンの幸せ以外何ものでもない。スタンダーズトリオがここで主張する新たなジャズの美意識に身も心も酔わされる。トリオ結成20年後においても、キースジャレット(p)ゲーリーピーコック(b)ジャックデジョネット(ds)の三人の名声は衰えを全く知らない。本作はこのトリオのデビュー作にしてジャズ史に刻まれた永遠の名盤である。

 

 

 

 

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