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 Somewhere

キース・ジャレットのトリオによる新譜。といっても2009年7月11日にスイスのルツェルン・コンサートホールにて収録されたライヴ録音である。変幻自在なる躍動感と明晰なリズム。これほどまでに美しく透明な音の流れがCD化されずに隠されていたとは・・・。驚きと同時に、今回の作品も期待を上回っていて、納得させられた。このCDが、今までのキースの作品のなかで一番気に入ったかもしれない!レナード・バーンスタインの楽曲を数多く引用しながらも、いつのまにかキース独自の曲調に変性させてしまうという絶妙なる演奏の境界線のなさ。見事である。「Somewhere」や「Tonight」はバーンスタインの名曲であるが、キースはピアノの硬質で余韻の残る独特な味わいの広がりをとおして換骨奪胎的に異質なる作品へと変容させることに成功している。しかも、自然体で。気負わない自在さ。柔軟さ。緻密ではあるが、意識していないかのように、気楽に弾くというピアノの離れ技で聴衆を魅了する。律然とした楽曲群の連続には慄然とさせられた。

 

1 Deep Space / Solar
2 Stars Fell On Alabama
3 Between Devil And The Deep Blue Sea
4 Somewhere / Everywhere
5 Tonight
6 I Thought About You

Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)

 

Recorded   2009.07

好きなミュージシャンの新作を聴く際の心持ちとして、変化を楽しむ(期待する)場合と、変わらないことを善しとする場合があると思います。Keith Jarrett率いるStandards trioの新作に接する際は、やはり後者ということになるのでしょうか?全世界のジャズファンを熱狂させた「Standards Vol.1」がリリースされたのが1983年なので、このジャズ史に名を刻むピアノトリオは、30年の長きにわたり、第一線で活躍し、傑作群を我々に届けてくれたことになります。
新たなリリースに関しては、その演奏内容が予定調和的だと片付けてしまう人もいると思います。しかし、私は、気の合う友達のいつまでも変わらない部分に惹かれるのと同じ感覚を、このトリオの作品に抱いてしまいます。
「Somewhere」は、2009年7月11日スイス、ルツェルンでのライヴ録音。ECMは、録音からリリースまでの期間が長いケースが多々あるのですが、この4年間のタイムラグは何を物語るのでしょうか?プロデューサーManfred Eicherのもしくは、Keith Jarrett本人の気持ちが熟すのを待つ時間なのでしょうか?冒頭は、Jarrettのピアノソロから、Miles Davisの「Solar」へ。「Solar」は、過去にも「Tribute」でBill Evansに捧げる曲として演奏されたことがあります。ピアノの音と共にJarrettの声が高く響くということは、演奏がのっている証拠のようで、曲も自在に展開していきます。
2曲目「 Stars Fell On Alabama」は、このトリオを聴き続けて良かったと実感できる素晴らしいバラード。
続く「Between the Devil and the Deep Blue Sea」は、軽快な曲調で、4ビートの良さを改めて思い知らされます。10年程前にこの目で観ることが出来たライブの様子を思い出しました。4曲目「Somewhere/Everywhere」は、この日最大の山場でしょうか?先ず、「West Side Story」からの「Somewhere」。スローなバラードが切々と演奏されます。Gary Peacockの小川のせせらぎを思わせるベースソロは相変わらずの絶品。後半はJarrettのオリジナル「Everywhere」で、ゴスペル調の広がり、雄大なスケール感は、正にKeith Jarrettにしか表現できない世界。20分にもおよぶ熱演で、観客の興奮度も頂点に達したかのよう。5曲目も「West Side Story」からの「Tonight」で、3人が堰を切ったようなスピード感あふれる演奏を披露。Jack DeJohnetteのドラムソロは「カッコいい」の一言。明快にくっきりと奏でられるお馴染みのテーマは、熱狂する観客へのサービスか?ラストの「I Thought About You」は、ラブソングをしんみりと奏でてくれます。特にPeacockの語りかけるようなベースソロが、グッと胸に迫ってきます。揺るぎない信念のもとに演奏を続けるレジェンド達の、いつまでも変わらないことへの感謝を込めて、満点を差し上げたいと思います。

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