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  Sleeper - Tokyo April 16, 1979

79年4月16日中野サンプラザでのライヴ録音だが、既発の「パーソナル・マウンテンズ」とのダブリはない。長尺の演奏が多い点では「サンシャイン・ソング」に近い。だからといって両アルバムから予測できる範囲に収まりきらないのが、ジャズのライヴ盤の面白い所。音の状態がよく、リズム、特にベースがよく聴こえる。パーソナル・マウンテンズやチャント・オブ・ザ・ソイルでの地面にねばりつくような低音を耳にすると、パレ・ダニエルソンのベースが強力な推進エンジンだということに気づかされる。オアシスの冒頭ではヤン・ガルバレクがフルートを吹き、アメリカン・カルテットに似たテイストをふりまく。全体的にヨーロピアン・カルテットの秘めたアーシ―で前衛的な面を強調した演奏・録音になっている。切れ目なく続くパーソナル〜の後半からイノセンスの前半のつなぎ部分に、キースのエコーのようなタッチが飛び出すのも面白い。何より注目したいのが、スダンダーズVOL.2の冒頭を飾ったソー・テンダー。79年にヨーロピアン・カルテットで演奏していたとは。それも倍近い長さで、サックスを加えて。スタンダーズ・ヴァージョンと聞き比べると、キースが80年以降ほぼトリオとソロに活動の範囲を限定したことがとても勿体なく思える。

1. Personal Mountains
2. Innocence
3. So Tender
4. Oasis
5. Chant Of The Soil
6. Prism
7. New Dance

Keith Jarrett (p)
Jan Garbarek (ts,ss,fl,per)
Palle Danielsson (b)
Jon Christensen (ds,per)

 

Recorded 1979.04

アルバムのタイトル通り、1979年4月16日、東京でのライヴ音源を2012年にリマスタし、(つまりキースたちの『OK』が出て・・)2012年8月7日リリース。この時期のヨーロピアン・カルテットが好きな人にはたまらないアルバムである。多くの方には不必要だろうがパーソナルは、
Keith Jarrett: piano, percussion
Jan Garbarek: tenor and soprano saxophones, flute, percussion
Palle Danielsson: double-bass
Jon Christensen: drums, percussion
である。もう少し詳しく書くと、このアルバムは、『ヨーロピアン・クァルテット』の未発表音源集で、1979年4月に『ビロンギング・イン・コンサート』と称し、日本国内で13公演を行った際に東京・中野サンプラザでレコーディングした未発音源を収録したものだ。『ビロンギング』あるいは『マイ・ソング』を聴いたことがある方には雰囲気がわかってもらえると思う。どれも素晴らしいのだが、特に『ソー・テンダー』、『パーソナル・マウンテンズ』、『ニュー・ダンス』の3曲が素晴らしい。ぼくはキース・ジャレットとヤン・ガルバレクの全アルバムを持っているが、この時期の二人の融合は素晴らしく、特にヤン・ガルバレクのサックスはこの頃が最も好きだ。その頃の未発表音源がこうして出てくるのだから凄い。ECMの倉庫にはホントにどれだけのお宝が隠されているのかもう想像もつかない。こういう『音』に出逢うといつまでもいつまでも浸っていたいと思う。素晴らしいまどろみだ。

ECMの改心を評価したい。ジャレットのスタンダーズもしくはソロで近年に録音された中から比較的良いものをただ単にCD化してリリースするだけがこのところルーチンとなっていたわけだが、これらの作品はその質の割には面白みに欠けるという惰性が常習となっていてリスナーにとってはあまり楽しい経験ではなかった。本作は1979年の東京における実録であるからジャレットのもっとも感動的で芸術的な時代をいまにして拝聴できるわけで、往年のジャレットフリークにとってこんなキセキはない。どの瞬間もすばらしいきらめきをもって我々に感動を与えてくれる音源であるが、大いなる期待とともにこの数年でいちばん集中して聴いたせいか最初の3曲のシークエンスが感涙そのものであった。1998年以降、マンネリ化したECMのジャレット作品群に辟易していた小生にとっては重要なアイテムのひとつとなったと言っても過言ではない。

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