アルバムのタイトル通り、1979年4月16日、東京でのライヴ音源を2012年にリマスタし、(つまりキースたちの『OK』が出て・・)2012年8月7日リリース。この時期のヨーロピアン・カルテットが好きな人にはたまらないアルバムである。多くの方には不必要だろうがパーソナルは、
Keith Jarrett: piano, percussion
Jan Garbarek: tenor and soprano saxophones, flute, percussion
Palle Danielsson: double-bass
Jon Christensen: drums, percussion
である。もう少し詳しく書くと、このアルバムは、『ヨーロピアン・クァルテット』の未発表音源集で、1979年4月に『ビロンギング・イン・コンサート』と称し、日本国内で13公演を行った際に東京・中野サンプラザでレコーディングした未発音源を収録したものだ。『ビロンギング』あるいは『マイ・ソング』を聴いたことがある方には雰囲気がわかってもらえると思う。どれも素晴らしいのだが、特に『ソー・テンダー』、『パーソナル・マウンテンズ』、『ニュー・ダンス』の3曲が素晴らしい。ぼくはキース・ジャレットとヤン・ガルバレクの全アルバムを持っているが、この時期の二人の融合は素晴らしく、特にヤン・ガルバレクのサックスはこの頃が最も好きだ。その頃の未発表音源がこうして出てくるのだから凄い。ECMの倉庫にはホントにどれだけのお宝が隠されているのかもう想像もつかない。こういう『音』に出逢うといつまでもいつまでも浸っていたいと思う。素晴らしいまどろみだ。
ECMの改心を評価したい。ジャレットのスタンダーズもしくはソロで近年に録音された中から比較的良いものをただ単にCD化してリリースするだけがこのところルーチンとなっていたわけだが、これらの作品はその質の割には面白みに欠けるという惰性が常習となっていてリスナーにとってはあまり楽しい経験ではなかった。本作は1979年の東京における実録であるからジャレットのもっとも感動的で芸術的な時代をいまにして拝聴できるわけで、往年のジャレットフリークにとってこんなキセキはない。どの瞬間もすばらしいきらめきをもって我々に感動を与えてくれる音源であるが、大いなる期待とともにこの数年でいちばん集中して聴いたせいか最初の3曲のシークエンスが感涙そのものであった。1998年以降、マンネリ化したECMのジャレット作品群に辟易していた小生にとっては重要なアイテムのひとつとなったと言っても過言ではない。 |