マイルス・デイヴィスの熱狂的コレクター、当時はまだ学生だったニルス・ウィンターの情熱に理解を示したミュージシャンたちが、このレーベルの立ち上げにひと役買ったのだった。そのスティープル・チェイスの30周年を記念して、設立当初の代表作10枚が、LPジャケット仕様&24bit、96KHzの高音質で復刻されることになった。今回選ばれた10作品とは、前述のジョーダン、ドリューの代表作2枚をはじめ、その作品と同じセッションで収録された『トゥー・ラヴズ』、『イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ』、ドリュー&ペデルセンの名盤『デュオ』、ジャッキー・マクリーン&デクスター・ゴードンの『ザ・ミーティング』、デクスター・ゴードンの『バウンシン・ウィズ・デックス』、スタン・ゲッツの『ライヴ・アット・モンマルトル』(この作品のみ2枚組)、テテ・モントリュー(一部で熱狂的なファンをもつバルセロナ出身の盲目のピアニスト)の『テテ!』、『テテ・ア・テテ』と続く。いずれもジャズ喫茶の人気盤だった名盤ばかりで、当時を懐かしく思い出す人もいるに違いない。
Duke Jordanの数あるSteeple Chaseレーベル吹き込み盤の中でも屈指の傑作である。はっきり言って演奏にスリルはない。その代わり,なごみとくつろぎの世界が横溢している。もともとファンキーな曲であった「危険な関係のブルース(No Problem)」が,ここでは極めて落ち着いたトーンで演奏されているし,ワルツで演奏される"Glad I Met Pat"はDuke Jordan版"Waltz for Debbie"とも称するべき可憐なメロディである。その他の曲もナイトキャップのBGMとして最適なトーン,リズムで演奏されるがゆえに,ジャズ喫茶の往年の人気盤となった。このように聴いていてほっとするジャズがあってもいい。初心者にもベテランにも愛されるべき好盤。
学生時代、ジャズ喫茶でこのアルバムと出会いました。で、すぐにレコードを買い求めました。あの頃はそれほどメジャーな存在でした。
彼のピアノの特徴をひとことで言い表せば音の清涼感です。澄みきっていて嫌味がない。テクニックが他のピアニストと較べて抜きんでているわけではありません。しかし、安心して聴いていられるのです。だからジャズ喫茶でも、難解かつヘヴィーなサウンドで押しまくるジャズの合間に、いわば心のお清めみたいな役目を担ってよく流されました。
さて、当アルバムは1曲目「危険な関係のブルース」からはじまり、しったりとしたバラード曲、定番ともいえる「グリーン・ドルフィン・ストリート」をはさんで最後に「フライト・トゥ・デンマーク」で締める。つまり本来のレコードの8曲編成のほうがアルバムとしての完成度は高いです。+4のボーナストラックをどう評価するかです。別テイクは蛇足だとも言えなくもありませんが、名曲「ジョルドゥ」が収録されているのは捨てがたい魅力です。
「癒し」という言葉を安易にもちいるのは好きではありませんが、とにかくこのアルバムを聴いていると心が沈静化することはたしかです。 |