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  Step Lightly

 

Full Album  

Full Album 2  

ホレス・シルヴァー・クインテットの黄金時代に貢献した名トランペッター、ブルー・ミッチェルのBN移籍第一作。録音当時発売されなかった幻の一枚。ハービー・ハンコック、ジョー・ヘンダーソンら当時のBNの精鋭がバックを務める。陰影に富んだ「クライ・ミー・アー・リヴァー」が魅力。

1. Mamacita
2. Sweet And Lovely
3. Andrea
4. Step Lightly
5. Cry Me A River
6. Bluesville

Blue Mitchell (tp)
Leo Wright (as)
Joe Henderson (ts)
Herbie Hancock (p)
Gene Taylor (b)
Roy Brooks (ds)

 

Recorded 1963.08.13

知る人ぞ知るミッチェルの「BNお蔵入り作品」なのだが、この作品が何とも味わい深い。いわば"The Things To Do"のプロトタイプのような作品なのだが、最も大きく異なるのは、"Step Lightly"ではスタンダードの"Sweet and Lovely"や"Cry Me A River"を演奏している中途半端さが残っている点だろう。しかし、この2曲が実は凄いのだ。こういった「臭い」曲は、サックスやトロンボーンなら何てことなく吹けるだろうが、トランペットのような線が細い楽器では結構難しいのである。倍テンしてアウトしてみたり、ミュート使ってカッコつけたりしないと、何ともバツが悪いというか、間が抜けた演奏になってしまう。そんな難曲にもかかわらず、ブルー・ミッチェル先生はオープン・ホーンでさらりと吹いてしまう。"Sweet and Lovely"で一番困るサビの4小節も、あっさりと(かなりいい加減に)かわしてしまった。普通なら、このような演奏をしたくても恥ずかしくてできないのだが、ミッチェルが何事もなかったように吹いてしまっても、誰にも文句が言えない点が凄いのだ。まさに清貧のブルー・ミッチェル師のなせる荒業なのである。 この作品の魅力はこれだけではない。ジョー・ヘンダーソンの提供した2曲が素晴らしいのだ。まずは1曲目の"Mamacita"だが、ケニー・ドーハムのトランペット・トッカータにも収録されている。ドーハムもミッチェルも清貧系トランペットではあるが、ドーハムにはモノクロ系なりに色気がある。ミッチェルは無色無臭かつ生真面目で頑固一徹さがウリだ。ラテンビートだったら普通は遊び心のひとつもあるだろうに、ミッチェル師ときたら豪速球でストレート勝負・・・というのが面白いのである。もう1曲は、タイトル曲の"Step Lightly"。これも清貧のミッチェル師でなければやりたい放題になりそうな面白い曲なのだが、熱く燃えながらも抑制の効いたいい演奏。清貧ゆえのクールに萌えてしまうのだ。 こんなに楽しめる作品なのに、BNでは17年間も未発表のままお蔵入りさせていたらしい。カスクーナ氏曰く、アルトのレオ・ライトの音程が悪かったかららしい。東芝EMI盤の日本語解説の上田氏によると、アンサンブルの平凡さと曲によっては演奏の出来が悪いからだそうだ。猫麻呂の推測では、ひとつにはレオ・ライトの音程説(カスクーナと同じ)だと思うが、もうひとつはコンセプトの中途半端さではないかと思う。本当はジョー・ヘンダーソンのオリジナルで全曲録音しても良かったのだろうが、それではドーハム路線と一緒になってしまうことのジレンマがあったのではないだろうか。それで、約1年後にコンセプトを固めて"The Things To Do"を録音したのではないかと・・・。(あくまでも推測ですが・・・。) お蔵入りとなったいわくといい、"The Things To Do"の陰に隠れて目立たない点といい、マニアとしては萌える作品なのだ。最近はこのCDもすっかり入手が難しくなってしまったが、そろそろRVGで出して貰いたいものだ。ただし、清貧のミッチェル師を味わうには、24bitRVGのぶ厚いサウンドよりも、東芝EMI盤の薄っぺらなサウンドの方が、雰囲気があって良いのではないか・・・と思う。
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