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  Junior's Cookin'

 

Full Album     

ファンキー・ジャズの名手,ジュニア・クックがブルー・ミッチェルと組んだ61年の作品。本邦初登場で世界初CD化である。ピアノ・トリオをバックに2人のホーンがグルーヴィなソロを聴かせてくれている。屈託のない2人のプレイに好感が持てる。
本アルバムによって、ホレスシルバーの存在感、個性の強さをあらためて確認される。この一枚はジュニアクックのリーダー名義で、ブルーミッチェルとの双頭によるテナー&トランペットクインテットの、よくある普通のバップ演奏作品である。何気なく聴いていたら、特に強烈な印所が残ることもないが、反面心地よいジャズだ。だが、そこにこのアルバムの価値があるといえるのではないか。なぜなら、この演奏メンバーは当時のホレスシルバーのクインテットそのままで、ピアニストにシルバーではない人物を迎えているものだからだ。しかも二度のセッションを行い、それぞれ別のピアニストを起用している。それを思えば聴くほうとしては、シルバークインテットの作品と比較してしまうのが自然で、ある意味それが本アルバムの正しい鑑賞姿勢だとさえ思う。

 

1. Myzar
2. Turbo Village
3. Easy Living
4. Blue Farouq
5. Sweet Cakes
6. Field Day
7. Pleasure Bent

Junior Cook (ts)
Blue Mitchell (tp)
Dolo Cocker (p)
Gene Taylor (b)
Roy Brooks (ds)

Ronnie Matthews (p)

 

Recorded 1961.04,12

そしてその感想が、“シルバーの個性の強さの再確認”なのである。クックもミッチェルももともと強い主張を持って前に出てくるタイプではない。シルバーの元では、フロント陣でありながらシルバーの引き立て役と思ってしまうほどオーソドックスな、優等生的な演奏をしている。シルバーが伴奏ででも濃厚な匂いを醸し出し、いかにも彼の作品なのだと感じさせられる。それらのシルバー作品と比較して、このアルバムは実にスマートというか、淡白な格好よさというか、そういった印象を受ける。インパクトはない分聴きやすい。クックのテナーはサイドマンとしては素晴らしいほどの没個性型、といったら悪評価になってしまうかもしれないが、変に癖のあるものを個性といって高評価されるプレイヤーより、数段よいテナーだと思う。素直にきれいだと思うのだ。ミッチェルのトランペットも似たようなスタイルだろう。線が細く、しかしその線は鋼でできているようなストレートさを思う。感情的に表情豊かに表現するのはうまくはないが、自身を正直に奏でているという印象だ。クックもミッチェルも、シルバーの濃厚なエキスを浴びていない分、全体像としてクリヤーな音楽となっていると思う。ピアニスト二人はシルバーを意識せずに弾いていただろうか。@〜B、Fでのロニーマシューズ、C〜Eのドロコーカー。両者とも心はバックメンバーに徹しているようだ。それゆえ、テナーとトランペットがシルバークインテットの場合よりずっと前に出ている。そんな中でも、@のバックでのリフなどは、どこかシルバー的な重さが念頭にあるように思える。またCやDで聴こえる鍵盤を右から左になで鳴らす奏法なども、打楽器的に演ずるシルバーを意識しているのかもしれない。その他の部分でもドロコーカーのほうは、幾分乱暴なスタイルを見せ、鍵盤を殴るシルバー奏法を薄っすら思い出してしまう。それでもピアノの存在感は小さくフロント陣の、染まっていない姿を聴くことができると思う。どうだろうか。やはり聴いていると、自然とシルバーがいないという存在感を、逆説的だが感じている。シルバークインテットを聴いていると、彼の空気が全面に行き渡るように、個性の強さのないメンバーをあえて選んでいるのではないかと思うことがある。しかしそれは面白味のないメンバーを集めているということではないことが、この作品を聴いてわかる。知的といえるようなスマートな格好よさ、そういうものが隠されていたのかもしれない。こってりとしたカレーうどんはおいしい。しかしカレーをかけていない素うどんのサッパリした味はカレーを除いてみないと判りにくい。また、本線からずれるかもしれないが、ひとつ思うことがある。本アルバムはクック名義になっているが、実はリーダーは誰でもよかったのではないか。本アルバムの一番の目的は、シルバーバンドに染まりすぎて埋れがちな他メンバーを新しい新鮮な水槽で泳がしてみたい…、とジャズランドレーベルが(もしくはメンバーの誰かが)考えたことだったのではないか。スタイルが幾分荒いドロコーカーを、2回目のセッションでは、よりシルバータイプから離れたピアニストに換えたことからもそれを想像してしまう。とりあえず、名義としてクックを、ということだったのでは…。『JUNIOR’S COOKIN’』とはいってもミッチェルと二人で吹いている姿のジャケットだし、オリジナル曲はミッチェルの2曲とコーカーの1曲でクックはない。演奏の雰囲気からもクックが単独の主役には思えない。スロウなBこそ、ほとんどの部分をクックのテナーが演じているが、目立つイントロ、エンディングではミッチェルがイイトコ取りしているようにも思える…。やはり目的は、「シルバーの息のかかっていないシルバーバンドを聴きたい」、ということだったように思えてきた。まあ、素直にジャズレコードとして、気分よく聴き通せることは間違いない。しかし、シルバーの影響力に考えをめぐらせながら、斜め的に聴いてみるのも楽しみの一つなのである。

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