★1930年生まれ、唯一無二の大御所アーティスト、アーマッド・ジャマル、至高のソロ ( + 3曲デュオ)作品。近年は、主にピアノ-ベース - ドラム + パーカッションという編成で活動するアーマッド・ジャマル。しかし、それのみならず、ジャマルのソロ録音は非常に少なく、ソロを中心にした作品は、実に初めて。1951年の初レコーディング以来、70年に近いキャリアを重ねてきたアーティストの実に貴重な作品のリリースになります。
★マイルス・デイビスをも魅了し、ヒップホップ界隈でサンプリングされて、時代を超えて広くリスペクトされる一方、他者名義の作品への参加も非常に少なく、自らの表現を貫いてきたジャマル。特に独特の“間"が生む演奏は最大の特長の一つですが、時を重ねたいぶし銀の神々しいばかりの存在感を放ちながら、エレガンスと華麗さ、気品も感じさせるピアノ・ソロの演奏には他の追随をまったく許さない圧倒的な世界観が満ちあふれています。
★そんな本作には、ジャマルの新旧のトレードマークとも言える名曲が二つ。
☆ひとつはオープニングの“マルセイユ"。この楽曲は、フランス文化省から"文化芸術勲章"も贈られたジャマルが、地中海に面した港町マルセイユに捧げた楽曲。2017年に発表した『マルセイユ』では異なるフォーマットの3つのヴァージョンを収録していましたが、こちらの演奏も4つ目のヴァージョンとして肩を並べるもの。古代ギリシャ、ローマの文化を基礎に、様々な文化が入り混じり、歴史の層が積み重なった都市の喜怒哀楽の情景を、メジャー、マイナーのコードを巧みに織り交ぜて、映し取ったような陰影の深い演奏は、筆舌に尽くしがたいものがあります。
☆もうひとつは、ジャマルの生涯のシンボルの一つでもある“ポインシアナ"。アルバムがリリースされてから半世紀がたちますが、グルーヴ感も魅力なトリオ演奏とは違う、ルバートを多用した流麗なソロ演奏が聴けることは非常に貴重。楽曲の魅力も永遠不滅なものと感じさせてやみません。 |